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≪ことばの交差点≫ 37

  • 執筆者の写真: 矢野修三
    矢野修三
  • 18 分前
  • 読了時間: 3分

        日加トゥデイ 2026年2月号 掲載

☆ 「三寒四温」に 物申す

  

 2月の和風名、如月(きさらぎ)の由来は諸説あるが、寒さが厳しく、「更に衣(きぬ)を

重ねて着る」という意味の「衣更着(きさらぎ)」が最も有力のようである。厳冬の候であり、風邪など引かぬように、衣服を更に着たくなるので、衣更着(きさらぎ)とし、中国の2月の月名である、この漢字「如月」を当てはめ、「きさらぎ」と読むことに。なかなか

複雑なり。


 ところで、2月如月も後半を迎えるころには春の足音が聞こえてくる。手がかじかむほど寒かったと思えば、かなり暖かな日も、そんな気まぐれな天気を表す四字熟語が、

いわゆる「三寒四温」。つまり、三日寒く、四日暖かい日が訪れ、だんだん春めく時節の言葉である、


 折よく先日、この「三寒四温」を「一石二鳥」などの四字熟語にとても興味のある上級者に教えたところ、彼女から思わぬ質問を受け、びっくり仰天、面食らってしまった。


 その内容は、「先生、これはお天気の話ですね。でしたら、漢字はなぜ『暖』ではなく、『温』ですか? 『三寒四暖』のほうがとても分かりやすいです」である。


 えー、思わず笑いながら、うーん、何回も唸ってしまった。こんなこと、今まで考えた

こともなかったが・・・、確かに、言われてみると、その通りである。でもよくもまあ、

こんな発想を。流石だが、恐ろしき上級者。


 事実、生徒には「暑い」と「熱い」の違いはとても大事だからねと、口を酸っぱくして

教えている。どちらも訓読みは「あつい」であり、英語では両方「hot」、確かに

ややこしい。


 そして、この「暖かい」と「温かい」も、両方「あたたかい」であり、生徒にしては

とても大変。書く場合はひらがなでもいいが、でも上級者になれば、「暖かい」と

「温かい」の違いは理解してもらいたい。とりあえず、天気には「暖かい日」を使い、

飲み物などには「温かいスープ」を使う。こんな説明である。


 すると、この「三寒四温」だが、天気のことなので、「寒い」や「暖かい」であり、

確かに、「温」は不自然である。生徒にすれば「三寒四暖(だん)」のほうが分かりやい。 


  うーん、 困ってしまった。とても説明などできず、とりあえず、この「三寒四温」は中国から伝わった四字熟語なので、いろいろ調べてみるね、が精一杯。


 早速、中国の友人にも聞いてみたが、この「三寒四温」は中国東北部で古くから使われた気象用語のようで、真冬の寒気の強弱を表わしており、「暖」はまだ早すぎで、「温」の

ほうがふさわしく感じたのは至極当然。「温暖な気候」などの言葉もあり、日本語ほど「暖」と「温」に、こだわっていないとのこと。なるほど。


 この「三寒四温」は明治末期ごろ伝わってきたようで、日本の暦に合わせて、春先の語句として使うようになり、日本人も全く気にならない。むしろ、気になるのは「暖」と「温」の違いを一生懸命学んだ日本語学習者かも。Exactly


 そこで、彼女にはこの「三寒四温」は昔からある、make senseな四字熟語なので、「暖」と「温」の違いなど気にする必要はないよ、と力説した。さっぱり要領を得ない

説明だが・・・。


 でも、少々気になり、日本の近代作家が作品の中に、この「三寒四温」を使っているか

どうか、AIに調べてもらったところ、ゼロのようである。


 あら、ひょっとすると、やはり言葉のプロは何となく、「温」に違和感を覚え、使いにくかったのでは・・・、と含み笑を浮かべながら、余計なことを考えてしまった。


 生徒の思わぬ質問から、それなりに心温まる思いを巡らせた2月も「逃げる」がごとく、あっという間に過ぎてしまい、いと心寒く、寂しい限りでござる。




 
 
 

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