≪ことばの交差点≫ 44

日加トゥデイ 2026年9月号 掲載
☆ 「頑張れ」と「加油」の対比
先日、台湾出身の友人との集まりがあり、そこで中国語の「加油」(ジャーヨウ) という言葉を話題にした。日本語にすれば、「頑張って」という意味である。
実は、日本語教師として、中国語を母語とする生徒には、よくこの「加油」を使って、
「日本語 ジャーヨウ」 と声を出して励ますと、なかなか効果的である。
ところで、同じ漢字言葉としての「加油」と「頑張る」。意味的には同じなのに、なぜ中国語と日本語で、こんなに漢字が異なるのか、すごく気になっていた。ちょうど良い機会なので、この「加油」の語源などを台湾の友人たちにいろいろ聞いてみた。
なるほど、まさしく「加油」(ジャーヨウ) は油を加えるであり、車もガソリンを入れると力強く走れるようになるので、そこから「頑張れ」や「ファイト」という励ましや応援の意味になったとのこと。 確かに、人間にもエネルギーを加えて、もっと力を出そう、の意味として、応援相手や自分自身を励ます掛け声として使うとのこと、なるほど、とても分かりやすい。
これに対して、日本語の「頑張る」だが、由来を探ると有力なのが二つある。一つは「我を張る」で、すなわち、自分の考えをどこまでも押し通す、意地を張るなどから変化して、踏ん張るや気を張るという意味に変化した。
もう一つは「眼を張る」で、ちゃんと目を開き、油断せず努力してやり通すという感覚から。いずれにせよ、どちらも困難に負けず、踏ん張って意思を貫くという響きがあり、さらに、発音や意味が似ている、頑固などの漢字「頑」(ガン)を当て字として使うようになったようで、「頑張る」や「頑張れ」などの言葉ができたとのこと。
うーむ、何となくややこしい。
日本語と中国語では、発想の起点が異なっており、文化の違いと言えばそれまでだが、とても興味をそそられる。すなわち、日本語は精神的な「自分の力で踏ん張る」であり、中国語は具体的な「外から油を補給する」である。
確かに、日本語の「頑張る」は自分自身に気合を入れるにはふさわしいが、応援の「頑張って」は、場合によっては「もう十分頑張っているのに・・・」と、相手が少し重く感じることもある。
一方、中国語の「加油」(ジャーヨウ)は「油を加えるよー」なので、応援には実にふさわしい。でも、自分自身に対しては、ちょっと弱い感じも・・・。
それゆえ、こんな考えが我が輩の頭の中に広がった。自分への励ましは、日本語の精神的な「頑張るぞ」がピッタリで、相手への応援には「加油」(ジャーヨウ)がバッチリかも。
こんなこと、どうでもいいことだが中国系2世の日本語上級者に話したら、彼曰く、この「加油」を英語にすると「Add oil」であり、ここバンクーバーの大学などでも、中国語系の若者たちは、冗談交じりに、「加油」の代わりに「Add oil」を使っているとのこと。
えー、びっくり。
そこで、この「Add oil」が「Good luck」や「Do your best」などの意味として、近い将来、一般的に使われるようになったら面白いね、と二人で笑ってしまった。
ちょうど、「久しぶり」を意味する「Long time no see」が中国語の「好久不見」(ハオジウ ブージェン)をそのまま、好久(long time) +不(no)+見(see) と英語に訳して作られた、という説が有力であり、確かに英語の正式な言い方ではなく、当初はかなり違和感があったようだが、現在では一般的に広まり、堂々と使われている。
ぜひ、「Add oil 」 も同じように広まって ! 頑張って ! 加油 ! Add oil !

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