「ことばの交差点 」6
- 矢野修三

- 2023年6月19日
- 読了時間: 3分
日加トゥデイ6月号 掲載

☆ 「猴」とは何もの・・・ ?
先日、チャイナタウンの近くに用事があり、帰りに中山公園に立ち寄った。かなり前に一度訪れたことがあり、池と緑が美しい中国式庭園である。のんびり散歩した後、お土産店に入り、十二支のお守りホルダーが目に留まり、思わず見入ってしまった。兼ねてより「干支十二支」に興味を持っているので・・・。
ここの十二支のお守り、片面には動物の絵があり、裏には十二支の漢字、いわゆる
「子、丑、寅、卯・・・」ではなくて、実際の動物の漢字、すなわち「鼠、牛、虎、兎・・・」が書いてあり、なかなかオモロい。我が輩は申年なので、その漢字を見て驚いた。当然「猿」と書いてあると思いきや、ナント「猴」である。
この漢字「猴」だが、残念ながら、今まで見た覚えもなく、読み方も分からない。
なぜ「猴」なのかと店員さんに尋ねた。すると十二支の「さる」は「猴」を使っている
とのこと。えー、びっくり<、でもなぜ? 興味が湧いてきて、早速中国人の友や生徒に聞いてみた。
中国語には「猿」と「猴」と二つあり、「猿」は比較的大きく、シッポがなく、人間に近いサル。一方「猴」は小型でシッポが長く、野生のサル。こんな感じにちゃんと使い分けているとのこと。だから十二支のサルは「猴」。うーん、なるほど。
ここで英語の話に少し寄り道。猿の英語は昔々中学で「monkey」としっかり学んだが、バンクバーに移り住んでから「ape」の存在を知ってびっくり。でもその時は「ape」など馴染めず、関心もなく、二つの違いなど調べようともしなかった。
そして今回の出来事である。何となくひらめきを感じて、すぐさま英和辞典をチェック。思わず膝を打った。「ape」は尾なし猿で人間に近いもの、とある。まさに中国語の「猿」と同じであり、「monkey」は尾が長い野生のサル ぴったり「猴」である。
またまたなるほど。
英語も中国語の「猿」と「猴」と同じように、「ape」と「monkey」を見事に二つ使い分けている。さらに、かなり昔人気を博したアメリカ映画「猿の惑星」の英語のタイトル名が「Planet of the Apes」だと分かり、驚き、納得である。「monkey」では無理かも。
日本も昔は「猿」と「猴」を両方使っていたようで、この猴(コウ)もサルとして一応辞書に載っているし、広島駅前に猿猴橋町という地名も、確かに。でも常用漢字ではなく、
今ではほとんど使われておらず、「類人猿」という単語もあるが、一般的には「猿」一つである。日本語は中国語や英語と比べて、「猿」に関しては明らかに遅れを取っている。
いかにも。
こんなこと考えもしなかったが、この漢字「猴」からいろいろ考えさせられた。でも考えて、調べて、学んで、楽しむことは老化防止に良きことなり。そこで「猿まね」の猿は「ape」か「monkey」か・・・。
そんなこと、「見ざる、聞かざる、言わざる」でごザル。




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