外から見る日本語 250
- 矢野修三

- 2023年5月27日
- 読了時間: 2分
バンクーバー新報 5月号 掲載

☆ 「重み」は深みのある言葉 !
この「外から見る日本語」も今回で250回を数えました。
2001年1月にスタートしたので、今年で22年間。まさかこんなに長く続くとは・・・、信じられない思いです。改めて
バンクーバー新報さんに感謝の意を表します。それまでエッセイなど書いたことがなく、締め切り日迫るハラハラ・ドキドキした最初のころを懐かしく思い出しながら、時の流れの「重み」も強く感じています。
さて、この「重み」だが、日本語教師泣かせの言葉である。先ず初級で形容詞を教える。「重い・軽い」「長い・短い」や「暑い・寒い」など。しばらくして、形容詞の名詞化、
すなわち「重さ」「長さ」や「暑さ」などを導入する。これは「重い」や「長い」などの「い」を「さ」に変えればいいので、そんなに難しくない。
だが、上級レベルになるともう一つの名詞化である「み」の付いた「重み」が登場して
くると日本語教師は大変である。当然、生徒は「長い」「大きい」や「広い」も「重み」と同じように「み」が付くと思ってしまう。でも「長み」や「大きみ」などあらず、まして「広み」などと言ったら女性の名前を想像してしまうかも。いかにも。
しかし、「重み」は使うのに、なぜ「長み」や「広み」は使わないのか。うーん、こんなこと考えたこともなかった。さらに「厚み」はあるのに「暑み」や「熱み」はなく、
「うまみ」はあるのに「おいしみ」はない。どうして、と生徒から質問されると困ってし
まう。とても説明などできず、無いものは無い。実のところはっきりした決まりなど無いとされている。
でも両方ある「重さ」と「重み」の違い、こんなこと習った記憶はないが、日本人は
ちゃんと使い分けている。「重さは10kg」のように具体的な程度を表す場合は「重さ」だが、「重みのある言葉」などその人の感覚的な判断の場合には「重み」がしっくりする。「み」が持つ感覚的な判断からできた言葉なのであろう。確かに「み」が付く形容詞はごく限られている。でも、最近は「やばい」の「やばみ」や「うれしい」の「うれしみ」なども若者言葉として使われているようで・・・、言葉は時代とともに、を強く感じる。
開き直ってこんな説明である。「さ」は全ての形容詞にOKだけど、「み」は特別な
形容詞だけなので、あまり気にせず、「み」の付いた形容詞に出合ったときに勉強すれば
大丈夫。日本人でもややこしいので生徒は大変。温かみのある言葉で励ましたい。
確かに日本語は重みのある言語だが、日本語教師としてはこのような深みにはまらず、
高みの見物ができればうれしい限りである。




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