『よもやま日本語』 日本語教師 矢野修三 -4
- 矢野修三

- 2020年11月2日
- 読了時間: 2分
更新日:8月25日
☆ 「酒の肴」の巻
「魚」の読み方、「魚釣り」を「さかな釣り」と読む人が大半だが、「うお釣り」と読む人も少なからず。この「魚」の訓読みになぜ「さかな」と「うお」と2つあるのか…、日本語教師としてよく受ける質問である。
これを説明するには、「酒の肴」に登場してもらわなければならない。飲み会などで、「さかなは湯豆腐がいいね」。これを聞いた日本語学習者は「湯豆腐は魚なの?」と戸惑ってしまう。
この「肴」の語源は「酒の菜」。お酒を飲む時の食べ物として、はるか昔は野菜だった。そこで「酒の菜」という言葉が生まれ、この「さけのな」が「さかな」と変化し、中国語で料理を表わすこの漢字「肴」を「さかな」として使ってきた。
江戸時代になり、「酒の肴」に野菜ではなく、魚( うお) がもてはやされ、肴といえば魚と相場が決まり、そこでこの魚( うお) を「さかな」と読むようになったとのこと。えー、びっくり。確かに「うお」は母音が重なって、発音しにくいし、丁寧の「お」を付けると「おうお」。漁業が盛んになり、「魚」を日常会話でよく使うようになった江戸時代に、言いにくい「魚」を「さかな」と発音したのは興味深い。すると、この「さかな」は当時のちょっとふざけた若者言葉だったのかも。
もちろん、現代では「さかな」も「魚」の正式な読み方だが、このような経緯があり、古い慣用句などの中には、やはり「さかな」と読んではダメな場合もあるので要注意。1日も早くコロナ騒動が終息し、「水を得た魚」のように、生き生きと人生を送りたいものである。
(うっぷすバンクーバー掲載)




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