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≪ことばの交差点≫ 41

  • 執筆者の写真: 矢野修三
    矢野修三
  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

         日加トゥデイ 2026年6月号 掲載


☆  「間違った」と「間違えた」の違いは・・・ ?

 

 最近のSNSはまるで生き物のようにどんどん進化しており、すごいというよりは恐ろしい感じがする。確かに、スマホなどはいろいろなことができるのでとても便利。指一本で銀行振り込みから外国にいる友人と会話や写真なども簡単に写せて送れる。でも便利過ぎてうまく使いこなせず、苛立ちを覚えるお年寄りも多い。小生も然り。


 そんなお仲間と会うと、手元にあるスマホがよく話題に。先日もある方から、操作のやり方を間違えてしまい、いろいろ触って、スマホが動かなくなって大弱り。

 

 加えて、言葉に関する、「間違ってしまった」と「間違えてしまった」はどんな違いがあるのか・・・こんな質問も受けてしまい、こちらも大弱り。うーん、確かに両方使われており、日本語教師泣かせの質問である


 これは先ず「間違う」と「間違える」の二つの動詞を意識する必要がある。つまり、自然に「火が消える」の自動詞と、何か目的があって「火を消す」の他動詞との違いで、「間違う」は自動詞であり、「間違える」は他動詞。でも、これは日本語上級者に説明するにはとても役立つが、日本語を母語とする人は自動詞や他動詞の違いなどほとんど意識したことはなく、こんな説明はとても分かりにくく、意味がない。


 でも、日本人はこの「間違う」と「間違える」を何気に使い分けている。例えば、職場などの住所録で、自分の住所が違っていれば、一般的に「間違っている」と自動詞「間違う」の活用形を使う。これは作成者が何となく無意識に「間違った」という自動詞感覚である。


 もし、他動詞「間違える」を使って、「私の住所、間違えてある」と言えば、何か目的があって、ワザと間違えた、というニュアンスで、とても違和感があり、ほとんど使わない。

逆に、自分本人が、友達の住所を「間違ってしまった」は、自然に間違ったニュアンスで、何となく責任逃れを感じる。やはり「間違える」を用いた「友達の住所を間違えてしまった」のほうがふさわしい。うーん、ごもっとも。ちゃんと使い分けている。すこい。


 例えば、「間違いやすい漢字」と「間違えやすい漢字」だが、これも両方何となく使っている。でも、「間違い」は自動詞「間違う」繋がりなので、自然にその漢字自体が間違いを招きやすい、という感じがあり、「間違え」は読む人がその漢字を間違えやすい、そんなニュアンスを感じるのでは。でもでも、さほど大きな差などなく、

どちらでもノープロブレム。


 さらに、「一歩間違えば、大惨事」という言い方であるが、「一歩間違えれば、大惨事」も耳にする。「間違えば」と「間違えれば」の違いであるが、これもどちらも意味は十分

通じる。


 そこで、「どんな違いを感じますか・・・」と、何人かの日本人に聞いてみた。すると、「一歩間違えば」を使うという人が多い。でも、どことなく違いも感じると答えた方も多い。 確かに、「一歩間違えば」はほんのわずか条件がずれればという、自然な危うさであり、一方、「間違えれば」は人が誤ればという、人的行為を感じる方も多いのでは・・・。無意識に、でも自動詞、他動詞の感覚的な違いを感じている。


 けれども、こんな違いを厳密に区別する必要などまるでないと思う。多くの日本人は「こっちのほうがしっくりくる」と、個人差もあろうが、何となく使い分けている。正に母語が持つ感受性であろう。ニュアンスを大事にする日本語の奥の深さである。


 すると、表題の「間違った」と「間違えた」だが、間違いを複雑なスマホのせいにしたい場合は「間違った」であり、使い方が下手で自分の責任にする場合は、このスマホは複雑すぎて、「間違えた」が何となくよろしいかも。確かに、日本語は、奥は深いが、間違えやすい言葉かも。

 


 
 
 

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